たかちほ正史発酵蔵、9月13日、オープンいたしました。

 

こんにちは。たかちほ正史発酵蔵の三代目、竹之下正史です。

うちの“混ぜない納豆〈たんねん.〉”は、1包で300円。

これを聞いて、「えっ?納豆にしてはちょっと高くないですか?」と言われること、まあまああります。

その気持ち、すごくよくわかります。 納豆といえば、3パックで100円とか、そんなイメージありますもんね。

ただ、うちの納豆はもともと昔からこのくらいの価格帯でつくってきたもので、 〈たんねん.〉だけが急に高くなったとか、高級路線に寄ったとかではないんです。

今回は「300円の納豆って、なんでそうなるの?」という話を、 三代続く納豆屋の三代目として、少しだけお話ししてみたいと思います。

 

僕も、最初に聞いたときは
「え、なかなかやな」と思った


これは素直に。 「1包300円」と聞いたとき、やっぱり最初は「……高っ」て思いました(笑)

「納豆って、そんな値段するの?」と。

でも実際、〈たんねん.〉の開発に向き合っていくなかで、 これは“高くしたいから高い”じゃなくて、“ここまでやったら自然とこうなる”やつやなと、だんだん腹に落ちてきました。

 

三代でやってきた納豆の“基礎体力”


うちの納豆づくりって、そもそもが「どこまで美味しくできるか」をとことん突き詰めるところから始まってるんです。

それは、僕の祖父――創業者がやっていた姿から、ずっと続いています。

「おいしい納豆はおいしい水から」と、霧島の名水が沸くこの地を探し当て、わざわざ地下水まで掘って蔵を建てたほどの情熱です。

毎晩、大豆の浸し具合を確認して、 夜中でも発酵室を巡回して、発酵時間や温度をちょっと変えては試し、食べて、また試す。

今思えば、それが“納豆の礎”だったんだと思います。

その試行錯誤が、父の代で受け継がれ、 営業をメインにしながらも、創業者の意思を引き継ぎ、うまい納豆を追求する姿勢は変わりませんでした。

容器を変えたり、新しい商品を考えたり、販路を県外へ広げたりと、積極的に道を拓いてくれました。

そして今、僕の代では、そうして築かれたものを受け継ぎながら、 時代に合わせて、製造の工程を見直したり、より合理的で精度の高い仕組みに整えたり。

変えるべきところは変えて、守るべきものは守る。 そうやって、「いま本当においしい納豆」を、変わらず届け続けることを目指しています。

 

“毎日食べたくなる納豆”を
どうやって作ってるかというと…


私たちが使っているのは、佐賀県産ふくゆたか大豆(1等級)。 今もなお、常に全国の豆を煮て味見していますが「これ以上に美味しい豆はない」と感じています。

水は、霧島山系の名水。 先々代が「美味しい納豆は、水で決まる」と信じて、自ら地下水を掘り当てた水です。

そして発酵は、豆の変化や香りを確かめながら、完熟のタイミングを見極めています。

これはもう、執念というか、クセというか。 でも「毎日食べたくなる納豆」をつくろうと思ったら、やっぱり手は抜けないです。

 

「高い・安い」って人によって違う。

僕は、無理に「この納豆を買ってください」とは言いたくありません。

「300円です」って言うと、「高っ」って思われるのも当然です。

でも、「うちの納豆は、こうして作ってます」ってだけは、伝えておきたくて。

たとえば、

・忙しい朝に、薬味をちょっと添えて。ごはんにのっけて、深呼吸してから一口。
・何もしたくない夜に、これだけで一品になる安心感

いろんな時、冷蔵庫に1包あったら、ちょっと違う時間になるかもしれません。

 

入ったばかりのスタッフも
びっくりしてました。


最近入ったスタッフが、はじめて〈たんねん.〉を食べたとき、「これ…納豆っていうより“料理”ですね」って言ってました。

「混ぜてないのに、この旨みは何ですか」と。

僕はその時、「そうでしょ?」とだけ言いましたけど、 内心、にやけてたと思います。

 

最後まで美味しい、って、どういうことか?


僕の経験ですが、納豆って、最初のひと口で「あ、美味しいかも」って思えても、 食べ終わったあとに苦みが残るようなものも、あるんです。

僕がやりたいのは、それじゃなくて、「最後のひと粒まで、静かにうまい」納豆なんです。

噛んだ瞬間、甘みがふわっと広がって、香りが鼻を抜けて、 気づいたら口の中がすーっときれいになる。食べたら、納豆の味ってずっと残るんですが、その後味までもうまいというか。

そのあとに「うちの納豆、マジうめーな」って小声でつぶやいてる、みたいな感じです。

 

300円の価値って、なんでしょうね。


「納豆に300円…」 最初はちょっと驚くかもしれません。

でも、一包は2〜3人でちょうどいい量で、ひとりなら2、3回に分けられるんです。

だから、一椀あたりはだいたい100円くらい。そう思うと、少し身近に感じてもらえるかもしれません。

朝がちょっと楽しくなったり、 夜が少しやさしくなったり、 誰かに贈って「ありがとう、これ美味しかったよ」と言われたり。
そんな時間に300円をかけるって、 僕は悪くないと思ってます。

よかったら、今日の食卓に置いてみてください。

冷凍で2ヶ月もつので、慌てなくていいです。

「今日はちょっと、ちゃんとごはん食べたい」 そんな日に1包あるだけで、ごはんがちょっと変わります。

そのときに、納豆のイメージもちょっと変わってるかもしれません。

ムフフ、って思わずニヤけてもらえたら、僕としてはそれだけでうれしいです。