「最近の納豆は、昔ほどおいしくない気がする」
そんなご意見を、何度かお聞きします。
ですが、そう言われると、少しだけ胸がざわつくのです。
でも同時に、
「わかる気もするな」と思ってしまう自分もいます。
確かに、昔の納豆は、今の納豆より味のインパクトが強かった。
もっと濃厚といいますか、納豆の香りも強烈でした。
まさに、ザ・納豆。
でも、それは
作り方が悪くなったとか、質が落ちたとか、
そういったことではないのです。
むしろ、技術も原料も、良くなる一方です。
では、なぜ納豆の味が薄くなったように感じるのか。
なぜ「味が薄くなった」と感じるのか
僕が思うに――
それは「管理」の問題が大きかったのではないかと思っています。
20年ほど前の納豆は、実はクレームが非常に多かったのです。
「白いブツブツが出ている」
「においがきつい」
そんな内容です。
ですが今では、ほとんどありません。
なぜか。
昔は、温度管理が今ほど徹底されていなかったのが原因です。
納豆は要冷蔵。
けれど当時は、前出しといって冷蔵ケースの外、通路に段ボールごと置かれていたり、店頭の入口で販売されていたり。
いま考えると、ちょっと驚きますよね。
納豆は発酵食品で、生きています。
温度が上がれば、発酵は進みます。
メーカーが決めた賞味期限内であっても、
流通や店頭で温度が上がれば、さらに発酵が進んでしまう。
その結果――
納豆臭やアンモニア臭が強くなったり、表面に白い粒が出たり。
いわゆる“二次発酵”の状態です。
そういった納豆を、知らずに口にしていたことも、きっと少なくなかったはずです。
さらに言えば、当時の家庭用冷蔵庫の性能や、保存環境も今ほど安定していませんでした。
けれど、こうした管理の違いは、味の印象に大きく影響していると思うのです。
それが、あの
“強烈な香り”や“ガツンとした味”の正体だったのではないか。
そう思うのです。
いまの納豆は、繊細になった
いまの納豆は、技術も温度管理も格段に上がりました。
大豆もおいしくなっています。
発酵のコントロールも精密になりました。
たれも改良を重ね、細かな味を追い求めています。
だからこそ、昔のような“ガツン”としたインパクトは少ないかもしれません。
でも、それは味が薄くなったのではなく、
繊細になった、ということ。
発酵が暴れていないぶん、
大豆そのものの甘みや、発酵の旨みの層を、穏やかに感じられるようになった。
味の幅は、むしろ広がっているのです。
とはいえ、昔の納豆の味を覚えていらっしゃる方には、少し物足りなく感じるかもしれません。
その感覚も、間違いではありません。
あの強烈さも、
間違いなく一つの“おいしさ”でしたから。
だから僕は、
昔は間違いで、今が正解、とは思っていません。
ただ、
味が変わったように感じる背景には理由がある。
そういうことを、
きちんとお伝えしておきたかったのです。
もし今の納豆が少しおとなしく感じたら、
それは「弱くなった」のではなく、
「整えられた」味ということです。
で、どちらが好きかは――
それぞれでいい。
あの頃の記憶ごと、味わってほしいなと思います。
もし、あの“ガツン”が恋しくなってしまったら、
少しだけ発酵が進んだ状態を楽しむ、という世界もあります。
保存や扱いには、どうかご注意くださいね。
発酵食品は、生きていますから。
「最近の納豆は、昔ほどおいしくない気がする」
と思ったら、昔の記憶も、いまの味も、
どちらも、納豆の表情のひとつとして、
楽しんでいただけたら、うれしいです。























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